リトアニア旅行抄(概要編)

リトアニアに行って来た。業務出張だったのだが、日程が木曜と金曜だったのをいいことに、滞在を延長して週末はプライベートだ。

今回の滞在で一気にリトアニアを好きになってしまった。何がいいっていろいろあるが、とにかく雰囲気を気に入ってしまったのだ。近いだけあってポーランドと感じが似ている。ポーランドも好きなので、単に私が東欧好きだというだけかもしれない。

 

さて、リトアニアバルト三国といえば、昨年末にエストニア大使館のツイートがバズったのも記憶に新しい。

 日本人であれば、北から順に50音順だ。つまりリトアニアは三国で最も南西に位置する。上記ツイートの地図をご覧いただければ分かる通り、北はラトビア、東はベラルーシ、南はポーランド、西はロシアの飛び地カリーニングラードと接する。緯度が高いのでわりと寒く、3月も末だというのにぼた雪が降っていた。

 

地理関係から一目瞭然だが、リトアニアは東欧諸国の御多分に漏れず艱難辛苦の歴史を積み上げて来た。ひとことで言うと、ロシア・ソビエトとドイツが悪い。近現代ヨーロッパ史はだいたいロシアとドイツとイギリスが悪いのであえて言及するまでもないが。

詳しくはWikipediaにでも譲るとして、その翻弄されぶりは20世紀の100年間を見るだけで十分だろう。20世紀初頭にロシア帝国から独立するもほどなくしてソビエト・ナチドイツの両国から侵攻を受ける。第二次大戦後はソビエトの構成共和国に編入され、ついに独立を達成したのが1990年。つい最近だ。具体的には、BUCK-TICKがデビューした時、リトアニアはまだソ連だった。これが具体的な例に聞こえるかどうかは人によるが。

北方の痩せた土地、鉱物資源にも乏しく、加えて人民が外圧で離散を繰り返して来たという歴史、現体制が成立してまだ半世紀も経過していないその若さから、近年ではバイオテクノロジーやIT系のスタートアップが盛んらしい。一説によるとイスラエル(テルアビブ)がそのお鉢をリトアニアに奪われつつあるという話だ。

 

そんなわけで、首都・ヴィリニュスはその小ぶりな街の中、おそらく半径5km圏内に300年分の歴史を一気に放り込んだような様相だった。

街を北から西に貫くネリス側の北側は企業ロゴを貼り付けたガラス張りの高層ビルがいくつも普請中だ。その対岸に位置する旧市街にはバロック・ゴシック・ルネサンスなんでもござれの教会たちが立ち並ぶクラシカルな街並み。そして中心部を少し離れればソビエト式の画一的なアパートメント群にグラフィティを添えて、といった塩梅だ。全てが互いに調和を拒否しており、でありながら全てがそこに住まう人々の生活の各局面に溶け合っている。人間の生活の営みだけが破綻しそうな各時代の遺産をつなぎ合わせている。

 

中世まで歴史を遡れる都市ではあるが、欧州の古都には珍しく街は平坦で、大きな起伏がない。きちんとルート設計すれば市内の観光は1日、ある程度博物館を詳しく見るとしても2日あれば余裕だろう。バスやトロリーバスも頻繁に走っているが、市内観光だけならば徒歩で十分だ。

何をおいてもまず教会だ。人口密度ならぬ教会密度というやつがあれば、ヴィリニュスはわりと上位に食い込むのではなかろうか。ナポレオンが「フランスにお持ち帰りしたい」と言ったという聖アンナ教会、神殿のようなヴィリニュス大聖堂、聖堂内の彫刻に圧倒される聖ペトロ・聖パウロ教会、これらのカトリック教会に加えて東方正教会プロテスタントと、思いつく範囲の宗派はだいたい揃っている。東方正教会はどの教会も香を焚き染めてあるということに初めて気が付いた。これも教会を手当たり次第にハシゴしたゆえの発見だ。博物館も数こそ多くはないが、KGBジェノサイド博物館を筆頭に充実した内容を提供してくれる。

 

とにかく物価が安い。全ての生活コストが高いスイスと比較すると、ざっくり3分の1から4分の1といったところか。500mlのミネラルウォーターが0.5〜0.7ユーロ。スープとツェペリナイ(マッシュポテトとひき肉のダンプリング)でお腹いっぱい食べて飲み物をつけても8ユーロくらい。あまりに物価が安いので、現金払いだと少額コインが大量に発生してしまう。が、街角のキオスクでもカードを受け付けるので敢えて現金を使う必要も特にない。タクシーも安い。ヴィリニュス空港から旧市街まで30分弱のドライブだが、料金が10数ユーロでびっくりした。

治安もよさそうだ。滞在中、夜間も含めて危険を感じたことはなかった。

ありがたいのが英語が街中で通じることで、ホテルやレストランはもちろんのこと、タクシーやキオスクでもこちらが異邦人と見ると向こうから英語で話しかけてくれる。リトアニア語、英語のほか、年代によってはロシア語も通じるようだ。なお、リトアニア語で「ありがとう」は「アキュー」みたいな発音である。

 

シティセントラルには小さいながらGO9というショッピングモールがある。この中にリトアニアブランドを集めたセレクトショップがあるのだが、とにかくどのブランドも私のツボを突きまくり、店内で30分ほど正気を失った結果、気がつくと大きな紙袋を下げて送り出されていた。リトアニア土産といえばリネンと琥珀が有名だそうだが、リトアニアのインディペンデントブランド、侮りがたしである。

 

リトアニアはカフェ文化も盛んだということで、街角のいたるところでコーヒーショップを見かける。観光中の休憩場所には事欠かない。

食事は前述の通り安価だが、いかんせんヘビーなメニューが多い。ローカルフードの代表格、ツェペリナイはマッシュポテトでひき肉を包み、蒸したり表面をかりっと焼いたりした上でサワークリームやベーコンビッツオイルをかけて食べる。どう考えてもデブ製造機なのだが、不思議とリトアニアの肥満率は高くないようだ。とはいえ、どのレストランも充実したスープメニューを提供しており、胃弱にとって優しい側面もある。ちなみにヴィリニュス大聖堂近くにラーメン店がある。ヨーロッパで食べるラーメンとしては及第点だ。お店のトレードマークがどう見てもスパゲッティモンスターなのもかわいい。

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ここから観光しつつ思ったことなどを書こうと思ったが、長くなってしまったので別記事に分けることとする。今日はここまで。