旅行の記録

ヨーロッパの真ん中に位置する小国に赴任して1年。日本どころかその時点の居住地に引きこもりっぱなしだった30年を取り戻すように旅行に出かけている。

そのうち記事にするとして、一旦リストを整理しておきたい。

 

・ロンドン

ここは複数回訪れている。日本人のいる美容院がいくつかあるのと、貧相な品揃えながら日本から取り寄せた本を売る書店があるのが大きい。

最初は大英図書館にグーテンベルグ聖書を見に行った。他にもベートーベンやショパンの直筆の楽譜だのなんだのいろいろ置いてあっていい。大英博物館といい、成功経験のあるもと帝国というのは大したもんだという品揃えである。ルネサンス前の宗教画にグッときてしまったのも大英博物館が発端だ。

テートモダンでは現代美術にビタイチ興味が持てないことを再確認した。強いていえば戦時中のプロパガンダ美術はいい。

大英図書館の近くにウェルカム・コレクションという生化学・医療にフォーカスした博物館があり、ここは愉快だ。鼻血を吹くひとの絵とか、クローン羊ドリーの毛とうんことか、めちゃくちゃ古い性玩具とか、そういうものが並んでいる。

アフタヌーンティーは何回か試したが、ケーキやら甘味の摂取上限が低いのでだいたい後悔する。結論、クリームティー(スコーンと紅茶)で十分だ。

 

ニュルンベルク

目的はひとつしかない。ニュルンベルク法廷博物館だ。

保存されている法廷から始まり、ニュルンベルク裁判に至る経緯とその内容が極めて網羅的に展示されている。オーディオガイドに日本語はないので英語でがんばること。

実際にナチの戦犯たちが腰掛けた長椅子や、絶滅収容所の映像なども展示されている。極めつけは刑の宣告シーンで、実際の音声をフルで聞ける。「絞首刑」を英語で「Death by hang」と言うのはここで覚えた。

ちなみにわずかだがカチンの虐殺についても触れられる。裁判初期に言及されたものの、数ヶ月の閉廷期間が開けたら誰も何も言わなくなっていた。ソ連このやろう、と思う瞬間である。東京裁判についても1コーナー割かれているが詳しくはない。

ニュルンベルクはナチが政権獲得後に最初の党大会が開催された土地としても有名で、ドク・ツェントルム(帝国党大会会場文書センター)の周りを歩くと、「おおこれはあの写真で見たあれ」「ここがシュペーア肝いりのサーチライトのアレか」「この辺にヒトラーゲッベルスが立って演説したのか」などいちいち確認できる。

また、ゲルマン民族博物館というのもあり、ここがニュルンベルクの街の規模に全く見合わない充実っぷりなので注意されたい。ドイツ全土からかき集めてきた文化に関わる全てが展示されている。美術品あり楽器あり甲冑あり食器あり衣服ありイコンあり、古い民家がそのまま移築されてすらいる。きらびやかな宮廷芸術のコーナーのど真ん中に実際に使用されたギロチンが置いてあったりして面食らう。世界最古の地球儀もここにある。正直、3時間でも足りない。

ニュルンベルガーヴルストは白っぽい見た目にハーブが入っていて、日本人にもなじみやすい。路上の屋台で「ヴルストおくれ」と言うと、10センチに満たないくらいの小さなヴルストが3本、硬めのパンに挟まって出てくる。うまい。

なお、ニュルンベルクはクリスマスマーケットで有名らしいので、そういうのがお好きな向きの方は12月に行ってください。私は遠慮しときます。

 

ブダペスト〜ウィーン

会社の先輩たちの旅行にくっついて行った。

ブダペスト、国会議事堂がまじでかっこいいのと、旧王城が下から見上げるとドラクエ感満載。温泉はぬるくて対して気持ちよくない(のとあまり衛生的ではない)のでおすすめしない。地下鉄が古いのでちょっとワクワクする。

ウィーンではオペラ「メディア」を見に行ったが、演出が部分的に現代リミックスで腑に落ちなかった。つーか外国語でオペラを見るって結構大変で、手元に字幕が出るからいいものの、視線は忙しいし使っている単語も見知らぬものがぽんぽん出てくるしで、脳が疲れる。ホテルザッハのザッハトルテ、特に感動なし。売店で5センチ四方くらいのキューブ型が売っているので、これを買うとしばらく朝食に困らない感じ。モーツァルト博物館に訪れたら日本語オーディオガイドを借りるべし。全面的にぎこちなく怪しいイントネーションでモーツァルトのだめっぷりを説明されるので二重に愉快である。

この2都市を渡り歩く際のポイントはグヤーシュの違いを楽しむことである。ハンガリアングヤーシュはスパイスの効いたさらっとしたスープ、オーストリアングヤーシュはこってり煮込みだ。私は断然ハンガリアンを推します。

 

サン・セバスチャン(スペイン)

これも会社の先輩たち(ブダペスト・ウィーンとは違うひとたち)の欠員補充で行った。

美食の街であり、ミシュラン3つ星レストランが3軒くらいある。バルも売るほどある。とある3つ星レストランでランチコースを食べたが、貧乏人には一万年早かった。おれの舌はそんなにソフィスティケイトされていないのである。バルで食べた安いタラのコロッケの方がよっぽど美味かった。

あまり何も覚えていない。そういうことである。今後は何としてもひとり旅にすることをいよいよ決意したのだった。

 

プラハ

期待を高めて訪れたものの、ザ・観光地、といった趣で落胆して帰ってきた。

あちこちの教会でアンサンブルコンサートを開催していて、これがなかなかよかった。2回別のコンサートに行ったが、絶対にモルダウをやるので聴き比べ状態である。

カトリックの国ということもあって、教会はだいたい豪奢。豪勢な教会を見て回ったあと、たまに質素な教会を見つけたりするとほっとするのはどういうわけだろうか。

世界一美しい図書館は、人が多すぎて趣もなにもあったもんではなかった。

ナチの高官、ハイドリヒの暗殺現場と、その後実行犯たちが立てこもり銃撃戦の末に自決した教会も残っている。これらを訪れた日は誕生日だったのだが、一体何をしているのか。

 

チューリヒ

デペッシュモードがヨーロッパツアー(その後ワールドツアーに拡大)をしていたのでライブを見に行った。

日本ではマイナーな部類にカウントされてしまうデペッシュモードだが、こちらではスタジアムクラスの大物なのである。スタジアムライブの何がいいって、客席で煙草吸いながら見られるところだ。

めちゃくちゃいいライブだった。Personal Jesusがかっこよすぎて鼻血を吹くところだった。

 

ワルシャワ

空港からタクシーに乗って宿泊先に向かったのだが、ホテルの真向かいがかの「科学文化宮殿」だった。ほほー、と呟く私に向かって運転手が「あれ何か知ってるか?スターリンからの贈り物さ!」と吐き捨て、ガイドブックに書いてあったことは正しいのだと教えてくれた。

ワルシャワ、これまでのところ一番気に入った滞在先だ。こことクラクフで見たことについてはちゃんと記事に起こしたいと思っている。

ワルシャワ蜂起博物館、ショパンミュージアムユダヤ博物館、ツィタデラ、パヴィアク刑務所あたりを回っている。ワルシャワフィルのコンサートも聴きに行った。ショパンコンクールの地だけあって、ピアノコンツェルトが主。

 

クラクフ

アウシュヴィッツ・ビルケナウのために行ったが、クラクフ自体もなかなかどうして充実している。

カジミエシュ地区、シンドラー琺瑯工場、プワシュフ収容所跡地とアウシュヴィッツを回った。アモン・ゲート(映画『シンドラーのリスト』で家のバルコニーからユダヤ人を狙撃して遊んでいた、プワシュフ収容所所長)の住んでいたRed Houseに立ち寄ったところ、何者かが買い取り、綺麗に建て直されていた。誰か入居するのだろうか。

 

・ナント

風光明媚で知られるフランスの小さな街に何をしに行ったのかというと、アインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンのライブを見に行ったのである。

ライブを見るためだけに行った。全く後悔していない。最高でした。

 

エルサレム

ここまできたら(どこまでだ)ユダヤ人のNational Homeに行かなければならないのではないかという強迫観念に取り憑かれて行った。トランプがくだらないことを言い出す直前である。

教会見放題で体力を消耗し、ヤド・ヴァシェムで思いっきり体調を崩した。割れそうな頭を抱えてトラムを待っていたが、事故により復旧の目処立たずということで諦めてタクシーを捕まえ、このタクシーが道を間違えまくって宿泊先にたどり着く頃にはMG5(マジでゲロ吐く5秒前)状態。どうも街のリズムと噛み合わなかったようである。思うことはいろいろあったけどもね。

 

・ベルリン

ここで2017年の旅を締めくくるはずが、突然の高熱により断念。今度リベンジしてきます。ベルゲンベルゼンとベルリンフィルが主眼。

 

ワルシャワクラクフニュルンベルクはそのうちちゃんと記事を書きます。

あと、見に行ったライブについても。