空っぽの袋(Remix)
どうということもない、ただ何ということもない自分に嫌気がさしただけだ。
140字の世界は悪くないけれど、虚空に向かって言葉を吐き捨てるばかりの自慰行為だけでは何も書けなくなってしまう気がする。
何かを書くことができる私がかつていたのかどうか、そんなことを考えたら余計に嫌気が深まるばかりだ。
何かを書こうと思う。
なんでもいい。ただ、達成すべき目的も、報告すべき相手も、承認を求めるべき場も、一切想定しない文章を書こうと思う。
何かを書かなければならない。書こうとしなければならない。私が私を許せるような文章になるまで書き続けなければならない。
何かを書かなければならない、と思ったのはこの間の薄気味悪い夢見のせいだ。
見知らぬ誰かの運転する車の助手席で、私はまるで前後の脈絡が掴めない電話に飽きている。それが終わって、何か素敵なことが起こりそうな予感に柄にもなく心拍数を上げた矢先、運転手は眠り、いくら呼んでも目を覚まさない。必死でハンドルに手を伸ばすけれど、やけに遠いハンドルを握るともう前が見えなくなってしまう。車は不思議と一定の速度で走り続け、私はサイドブレーキを引くことをためらっている。細くくねる下り坂を、止まらない車が走る。ああもう駄目だと見上げた空はやたらと白い。路面を噛むタイヤの感触がふと軽くなり、そのくせ引力が発動しない。不思議と安らかな諦念に身を委ねて落下を待つ。エンドロール。
目が覚めてあまりに直喩が明らかで、己の脳の短絡に落胆した。結局、一番上等な幻想を提供してくれるはずの夢ですらこの程度だ。深みも厚みもない。
こうしていてもろくな言葉が出てこないことにひたすら焦燥ばかりしている。
操る言葉に美しさのかけらもなく、述べる内容は一片の興味も惹けず、この焦燥をすらきちんと表現できない。
書かなければならない。書こうとしなければならない。
この肥大して今にも崩れ落ちそうな自意識を支えるために、書くのだ。
書けるはずだ。内容は何だっていい。書けるようになるまで書くしかない。